文庫/126P/600円
身体が欠けても、 希望が欠けても、 空ぐらいなら裂いてやる。
森貞竜光は、二十一歳にして大切なものを二つ失くした。 理想の家庭を築く夢。左手の親指の先。 目指していた者にも、完璧な者にももうなれない。 絶望すらも通り過ぎ、ただ漫然と日々を消費する。 このまま妻を愛して二人で生きていけたらそれでいい。 俺の人生は、もうそれだけで。 そんなとき、恩師に渡された「左利き用のキャッチャーミット」。 後輩と再びバッテリーを組み、逆の手を使って野球をして……。 いつしか、その『無意味』に竜光の心は弾んでいた。 既婚社会人が駆け抜ける、周回遅れの青春ストーリー。 自己愛混じりの感傷はもういらない。 白球よ、頭上を覆うこの紺碧をつらぬけ。
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